フィトライフのガーデンデザイナーが考える「暮らしのための庭つくり講座」 Vol.4
庭をデザインするということは、どういうことでしょうか?一般にデザインとはカタチのことを指しますが、実際は機能性や安全性、コストなど全てを含みます。ここでは、それらを順番に見ていきましょう。
ここでようやくスタイルや庭のテイストについて考えはじめます。ナチュラルな風合い、インダストリアルな風合い、シンプルさ、落ち着きや安らぎなど庭や外構に求められるテイストは様々です。自分の庭ですから何を選んでも間違いではありませんが、アドバイスとして二つのことを意識されると良いと思います。ひとつめは、ご自宅の外観や色、街並みの環境です。特に色は重要です。色が多く入るとチグハグな印象を与え、大きな風景の中で見ると一体感を損なう場合が多いです。特に家の壁や屋根の色との調和は大事だと思います。次に、ご自宅のリビングなどのインテリアや調度品です。リビングに置かれているものは、ご家族の気にいられたものが多く、無意識に好きなテイストが集まっています。私たちも設計時にはお部屋を見せていただいてお客様のお好みを推察する場合が多々あります。
最も大切な項目です。私たちもお客様も一番頭を痛める問題です。練り上げてきたプランを積算し、予算化します。プロに任せることが最も良いでしょう。例えば、石積がある場合、石は重さ(トン・キロ)で販売されています。しかし、石積は面積や体積で計算しなければなりません。一般の方でも積算できる部分もありますが、石のように重さを面積に換算し、積算すること無理があります。
全てが予算内に収まればよいですが、多くの場合が予算をオーバーします。その場合の対処法はいくつかあります。
本当に必要か?余分なものは入っていないか?を再検討する。最もオーソドックスな手法です。
材料や大きさ、施工方法を含め再設計します。
工事内容の中で最も優先度合いや火急性が高いものを選び、それらを優先させて予算化します
今必要な施工内容 数年以内に行えばよい内容に分割し、数年後の完成を目指します。庭と家の大きな違いは、庭は完成していなくても暮らせるということです。私たちの経験からアドバイスしますと、駐車場、ポスト、インターフォンがないと生活に支障をきたします。また 遮蔽用のフェンスがないと家の暮らしが窮屈になります。これらをまず整備し、庭の形状やその他の部分を暮らしながら検討するのも良いと思います。
施工される会社の方と相談され、いわゆる施主支給というカタチで材料支給で工事が可能かどうか?相談します。お客様がインターネット等で購入されたものを使って施工するという形式です。これにより、安く、好みの材料を入手できる場合があります。但し、施工会社の方からは、材料の品質や施工方法が分からないものもあるので、事前によく相談されることが必要です。特に外国産の電気機器など規格に合わない場合もありますのでご注意ください。施工会社との十分な事前相談が必要です。
これは、工事自体にお客様が参加されることを指します。ブロック積みや塀など強度や安全性が必要な部分は、プロに任せることが前提条件になりますが、その以外で周囲に迷惑を掛けない部分を自分で作ることによって工事費用を低減させます。セルフビルドとは、言葉通りご自身で作られることです。材料の買い付け、運搬から工事までを行う手法です。対してハーフビルドは、私たちが導入している手法です。比較的簡単な工事部分をお客様にお手伝い頂き、些少ですが費用を低減させる手法です。具体的には、ウッドデッキを作る場合、デッキの色塗りや下穴空け、ビス打ちなどをお客様にお願いします。お客様の技量や体力、時間に合わせて参加内容を決めます。材料や工事道具、用具は弊社が用意します。参加によるメリットは、金額的には数万程度の場合が多いですが、自分の庭を作る愉しさや、技術や道具の使い方の体得、現場作業の様子を製作者としてご理解頂ける点があります。
庭つくりをプロに依頼した場合、お客様が思われる費用とプロの積算する費用との間に大きなギャップが生まれる場合があります。ここでは、庭つくりに必要な費用内訳を吟味してみましょう。
庭つくりに必要な費用としてお客様が大まか思いつかれる費用として、樹木代金、庭園材料の費用(石やレンガ、タイルなど)などがあります。比較的目に見える費用が思いつかれる傾向にあります。しかしながら、実際の庭つくりには、こうした「目に見える」費用以外のものが大半を占めます。実際、材料費などより、運搬、搬入費などの手間=人件費や工事の運営費用などがかかる為です。また、「①庭インフラ編」でも記述しましたように、庭を作る前の条件を整える必要がある場合が多く、お客様にとって「意外な」費用が必要な場合が多いからです。材料の費用だけでは、実際庭つくりは行えず、立地条件など手作業で行わなくてはいけない作業が多いのが庭つくりのポイントです。例えば、高台にある住宅で庭つくりすることと、トラックなどを横づけできる場所では、材料搬入コストは大幅に違います。ご自宅の立地条件、庭面積、搬入経路など考慮し、予算化される前に信頼できるプロとよくご相談されることをお勧めします
ここでは費用が意外と増える具体的な実例を列挙します。
樹木やレンガ、タイルなどの他、庭つくりでは、土面をどのように処理するか?ということが大きな問題になります。例えば、樹木を植えても、土面がそのままであれば豊かな庭空間は生まれません。素晴らしい家具を入れても、床が剥き出しの家をご想像ください。床に落ち着いたフロアー材が敷かれていれば家具も気品がありますが、土の見えるような状態では論外でしょう。また、土面を多く残しておくと、庭の管理面でも問題です。数年は大丈夫かもしれませんが、将来的には雑草が蔓延る原因にもなり、庭の管理が大変になります。この土面を如何に処理するか?という問題が生じます。一般的に費用が低いものから列記しますと、芝生→砂利→インターロッキング→レンガ、タイル、デッキなどとなります。芝生の場合 生育条件や管理の問題があり、実際にはこれらの要素を全て使って構成する必要が出てきます。こうした土面の処理は意外な費用の盲点として考慮しておく必要があります
「①庭インフラ編」をご覧ください。
新築、リフォームを問わず、近隣との境界、塀などの状態、現在の庭の状態を指します。庭に大きな石があり搬出・処分しなければならない場合、大抵、大型クレーンが必要になります。特に現在、石は「産業廃棄物」扱いになるため処理には多額の費用が必要になります。また、境界に新たに塀を作る、または塀を撤去・補修する必要がある。側溝の整備や樹木の伐採・抜根が必要な場合なども列挙できます。本来は、何もない白紙の状態が一番望ましいとも言えますが、庭つくりは、建築と異なり、今ある材料を使ってリフォームすることも可能です。昔からある樹木や石をうまく利用して、新しいデザインとして活用する。これも庭つくりの醍醐味だと言えます。
これは外構要素に属しますが、道路から1.5M程度高い敷地の場合、一段15センチとして10段の階段が必要になります。また、階段を作る下地も作る必要が生まれます。手摺も必要でしょう。駐車場などを作る場合、道路とほぼ水平にする必要があり、大量の土砂を撤去し、擁壁を作らねばなりません。また、高台への材料搬入などの費用も嵩みます。予算化する場合、注意が必要です。また、近隣環境のより、工事車両が駐車できない場合、駐車場費用などもかかる場合があります。こうした費用を加算することは心苦しい気持ちにもなりますが、近隣への配慮と安全で安心な工事を行うための費用だとご理解ください。
投稿日:2016/10/29