狭い敷地での駐車場(カーポート)作り

1.標準的な駐車場の大きさとは?

普通自動車(プリウス程度)の場合、駐車場の大きさは、幅2.5メートル 奥行6.0メートル程度が標準になります。両側の扉を全開に出来ませんが、乗り降りに支障ない広さと言えます。

これだけのスペースを確保できれば、ほぼ問題がないと言えますが、現実は、なかなか難しいのが実際です。

それでは、国土交通省から出ている駐車場設計・施工指針を参考にして、基準を見ていきます。

駐車場の面積

まず、駐車場の大きさです。軽自動車と普通自動車では2.4mも長さが違います。

駐車ますの大きさ

設計対象車両 長さ 幅員
軽自動車 3.6m 2.0m
小型乗用車 5.0m 2.3m
普通乗用車 6.0m 2.5m
小型貨物車 7.7m 3.0m
大型貨物車およびバス 13.0m 3.3m

では、最新型のプリウスのスペックを具体的に見てみます(平成29年2月現在)。

長さ4.645㎜となってますから、腕に自信があれば、道路境界線から4.7メートルが最低ラインでしょうか?現実には5メートル程度は必要だと思います。

幅は1,760㎜。1.9メートルあれば入庫できますが、左右に障害物があれば、実際ドアが開きません。やはり、最低限2.3メートル程度必要と思われます。

  • 車いすなどを使われる場合、介助する方がいる場合で最低3.3メートル、車いすの方のみの場合、最低で3.5メートル必要と言われています。
  • 並列駐車(縦列駐車)の場合、普通乗用車で最低で幅6.7メートル程度 奥行2.4メートル程度が必要になってきます。

駐車場の高さ

次に、駐車場の屋根の最低必要な高さを見ていきましょう。

天井の有効高さ(下記値以上)

設計対象車両 車路 車室
軽自動車 2.3m 2.1m
小型乗用車 2.3m 2.1m
普通乗用車 2.4m 2.2m
小型貨物車 3.7m 3.5m
大型貨物車およびバス 4.1m 3.9m

駐車場の勾配

これには特に規定はありませんが、排水に留意し、傾斜がある場合滑り止めを考慮する必要を要求されています。

駐車場は、平らに作られているように見えますが、通常は3%程度の勾配を取ります。具体的には、5mで15cm程度です。これは主に排水を目的としています。

大抵、家側から道路側に下がっていくのが一般的です。道路の高さは調整できませんから、駐車場の終わりは、通常道路より18cm程度(6mの場合)上がるとお考えください。

この傾斜があまりに強い場合、入出庫する際、車の底面をこすりつけたり、サイドブレーキが弱い際、車が動き出したりする危険も伴います。

車路の幅員(駐車場までの敷地内の車の通路)

駐車場に車をいれる前面車路(道路)の幅員(幅)です。後退や転回をしないといけませんので、通行にだけ使う車路より広さが要求されます。表右側(スマートフォンでは下の表)は、「やむ得ない場合」の最小縮小値です。お間違いのないようお願いいたします。

車路の幅員

設計対象車両 歩行者通路あり 歩行者通路なし
軽自動車 7.0m 6.5m
小型乗用車 7.0m 6.5m
普通乗用車 7.0m 6.5m
小型貨物車 7.5m 7.0m
大型貨物車およびバス 13.0m 12.5m

車路の幅員(最小値)

設計対象車両 歩行者通路あり 歩行者通路なし
軽自動車 5.5m 5.5m(対面通行)5.0m(一方通行)
小型乗用車 5.5m 5.5m(対面通行)5.0m(一方通行)
普通乗用車 5.5m 5.5m(対面通行)5.0m(一方通行)
小型貨物車 6.5m 6.0m
大型貨物車およびバス 11.5m 11.0m

車路の勾配

駐車場に入る道路の傾きのことです。実際、車路をご自宅の敷地内に作られる方は少ないと思いますがご参考までに。

車路勾配:12%以下

具体的な大きさ

このように、安全で十全な駐車場を確保しようとした場合、2.500㎜×6.000㎜(15.00㎡)必要になってきます。坪数に換算すれば、4.54坪。最近は都市部では30〜40坪ほどの宅地が多いですから、10%〜15%程度が車一台に占拠されるともいえます。

さらに、駐車場は、道路に面した玄関先に作られます。玄関先には、ポーチ、門柱、門扉、自転車置き場、アプローチなどもあります。それぞれを十分に活かしたスペースを見つけて配置するのは、実際には至難の業となります。(また、余談ですが、うまく収まったかのように見えるデザインでも、「雨の日」には要注意。雨の日を想定しておかないと、車に触れて、衣服が濡れるなどという事も起こります。)

スペースが狭い場合、やはり長期的視点に立って、事前にご家族に必要な車の大きさから見直す必要もあります。現在は、軽車両でも様々なタイプがありますので、軽自動車の活用も一考です。

2.実際のクルマの使い方を考える

自動車は、ほぼ毎日使う方が殆どです。毎日のクルマの出し入れを安全に快適に行うことは非常に重要です。これらを考慮する場合のポイント幾つか列挙いたします。

1)家の前の道路の幅はいくらか?

駐車される場所はどのような道路に面しているのでしょうか?駐車場が面している道路の広さは大変重要です。

2車線道路で2750㎜~3500㎜/1車線、1車線道で4000㎜程度が一般的ですが、古い住宅地や山間部ではこうした広さを満たしていない場合も多く、家前の道路幅を計っておく必要があります。狭い場合切り返しが難しいため、並列駐車(縦列駐車)しかできない場合も多くあります。

道路幅は、お持ちのクルマの車体の最小回転半径とも関係してきますので、道路幅と愛車の回転半径の関係をよくご考慮ください。

2)交通環境を観察する

道路幅以外にも、電信柱の位置や道路の交通量や信号位置、隣の家の塀の状態、向いの家の外構デザイン、道路の傾斜・・・なども考慮する必要があります。

左右の見通しや歩行者・自転車の状況も大切でしょう。ご自分にとって安全に一番出し入れのしやす駐車場の「位置」をイメージする必要があります。

3.具体例から見る駐車場デザインと工夫

1)並列駐車(縦列駐車)で庭と駐車場を共存させる


この事例は、奥行きがないため、並列駐車(縦列駐車)を前提に設計されています。
幸い(?)前面道路が一方通行のため、自動車の進入方向一定になります。その切り替えしカーブに沿って、門柱が設計されています。また、駐車場全体を「庭と同化」するように設計しております。
運転席が道路側にあたるため、空いたスペースに植栽を行っています。門柱に併設したウッドドアは、家脇に自転車を収納するためのドアです。自転車を押して入れるように90㎝近くで設計されています。

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2)実質幅210センチの駐車場

この駐車場の幅は、フェンスと家側の縦トユのため、実質210㎝以下の幅しかありません。そのため、道路境界までフェンスを施工すると、乗り降りが出来なくなります。そのため、(申し訳ないですが)フェンスを途中までで設計し、隣の空き地にドアが開くように設計しています。

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3)自動車の出入りをイメージした駐車場

次の2例は、車の出入りをイメージして、駐車場の角を少し広げています。少しのデザイン工夫ですが、運転者にとっては、気持ちが楽になります。

4)ウッドデッキと駐車場を共存させる

この事例は、並列駐車場でありながら、家の構造上、駐車場上部に約2メートル×3.4メートルのウッドデッキを設置した事例です。

デッキの脚部をできるだけ家側に押し込むため、構造を鉄骨で制作し、駐車場を広く活用でいるようにしています。

ウッドデッキには遮蔽のためのウッドフェンスを取り付け、さらにウッドデッキ下部に屋根を設け、自転車置き場として活用していただく、一石三鳥のプランとしました。

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まとめ

ここまで見てきて、狭い敷地での駐車場には幾つかの問題点があることをご理解いただけたと思います。簡単におさらいしますと、

1)安全な車の出し入れを行うスペースの確保
2)家前の門柱、アプローチとの共存

この2点に集約されます。

駐車場やカーポート作りのさいに、ご参考頂ければ幸いです。

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投稿日:2017/02/15

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