スロープを希望されるお客様が年々増加しています。スロープをご要望される方は、さまざまおられます。
年齢を重ねられ、足元の段差が気になり階段を避けたい方
車椅子をご利用になる方
将来を考えられ、若い内から準備される方
自転車やオートバイを玄関先まで入れたい方
階段よりもスロープの方が歩きやすいと考えられる方
このように、目的や用途様々ですが、それらにスロープの傾斜角や幅も当然変わってきます。
スロープの必要性の代表格である「車椅子」の場合、自走するには約5度以内の勾配を求められます(屋内)。具体的には1メートル(階段で約7段)の段差を登るには、12メートルの距離が必要です。介助者がおられる場合で約10度未満ですので、同様に1メートルの段差を越えるには、6メートル必要となります。
これが庭などの屋外になりますと、一般に1/15勾配が求められますので、先ほどの例に倣うと、15メートルのスロープが必要となります。
ここで多くの方にとっては、家前の階段が7段もない方が多いと思いますが、玄関までたどりついても、ポーチ及び玄関とフロアー高の段差がありますので(大抵45センチ程度)、実は多くのご家庭に当てはまる段差だと思います。
しかし、実際多くのご家庭で15メートルの長さと(車椅子の幅は約70センチですので)推奨120センチの幅のスロープを作ることは無理があるのが現実です。
スロープもコンクリートで作る以外に、金属製(主にアルミ)などで架ける脱着可能なものもありますので実際お困りの方は是非ケアマネージャー様とご相談の上、ご検索ください。
こうした介助に必要な部材や工事は、多くの場合行政の助成対象になっていますので、そうした申請もお忘れなくご利用されるといいと思います。
今回の事例は、こうした長大なスロープを玄関側ではなく余地としての庭側に回し、スペースを確保、所謂リビングなどにある「掃き出し窓」から出入り出来るようにした点が最大のポイントとなります。
また、お客さまのご要望で、コンクリートで固めたスロープ然したスロープではなく、植物を楽しみ、庭とマッチングしたスロープをデザインいたしました。モルタルの仕上げも良いですが、天然の木材(防腐処理済み)で作るスロープは、柔らかく、植物との相性もピッタリです。
庭のデザインの変更も兼ねたスロープ作りを行いました。
当初の設計スケッチです。ただ、スロープを作るだけでなく、庭的空間、そして憩える雰囲気というものを考え設計しております。樹木を植える植栽桝も設けています。また、第二の玄関として袖壁やウッドドアも入れています。新しい玄関として印象付けしています。
実際の完成写真です。スロープ途中の休憩所を簡略化しています。
防腐処理を行なった木で骨組みを組み上げています。
ウッドスロープの様子です。スロープには当然70センチ程度の手すりも必要となります。
当然、掃き出し窓では、施錠の問題が出てきますので、入り口としてドアを取り付ける準備をしています。
スロープの入り口です。ちょっとした玄関のようにしております。
左側には植栽も施しています。樹木があるだけで、スロープの雰囲気は全然変わります。
スロープは大変緩やかで、介助者なしでもご利用いただけます。
オリジナルのウッドドア。
スロープの折り返し地点。
スロープ奥に作ったもう一つの植栽桝。
スロープからはこのように見えます。
家の中から見た、新しいドアの様子。
スロープから見たドア。網戸も付けました。
全体像はこのような感じです。
庭先にシンクも用意しました。ホースをつけたままに出来るように二口蛇口。家に入る前に感染予防で手を洗うことができます。
スロープも庭の一員としてデザインすることができます。確かに、長い距離と面積が必要ですが、可能な場合は「庭スロープ」としてお考えになられればと思います。機能性と合理性、安全性が求められるスロープですが、素材や材料、植物とのコラボを考えると楽しい創作物になるかもしれません。
投稿日:2022/01/22