最初の庭に悩むあなたへ

家を建てて、一応の外構工事(門柱や駐車場、フェンス)を作り、あとはそのままで放置されている家を時々お見かけます。そのような家を見かけると、予算の問題というよりも、「どのようにこの場所を庭に仕立てればよいのか?」と悩まれているのではないかという気がしてきます。

それと、同時に「とりあえず」庭を作らず放置されている賢明さも感じます。昨今、大手ハウスメーカーなどでは、庭の植栽やデザインと家がセットで売られている場合もあります。地域の「緑化」水準を維持するという意味では、意義がありますが、一方、家と庭の「定食」のようなもので、定食の内容も選べません。いわゆる、日替わり定食を食べたい人はそれでもいいのでしょうけど、あなたは、それを食べたいでしょうか?それがあなたの庭なのでしょうか?という疑問も湧きます。

そこで、最初の庭つくりを悩むあなたへ、お役にたてればと思い本コラムを執筆いたします。

 

庭への一歩目

庭に縛られる日本人

日本には、特に平安時代から続く庭の文化が大きな地層として堆積しています。そのため、庭のイメージを頭の中で思い描いてくださいとお願いすれば、大抵の方が瞬時にイメージできます。これが、文化の刷り込みであり、先入観だといえます。素晴らしい文化ですが、同時に私たちを無意識に縛っている紐のようなものです。

ここでは、まず一度その場所から離れることをお勧めします。

例えば、そもそもなぜ、庭に木を植えないといけないのでしょうか?

答えは簡単です。
植える必要はありません。庭=木ではないのです。木も植えれる場所に過ぎないのです。木が好きな人は、植えれば良い。好きでない人、必要と考えない人は植える必要はありません。

では、次に疑問が出てきます。「では庭といわれる場所は何のためにあるのか」と疑念です。

答えは簡単です。
そこは庭ではありません。あなたの余った「敷地」なのです。庭と考えずに敷地と考えると、肩の荷が少し降りるように思いませんか?

目に見えぬ庭を追い求めるよりは、自分の敷地で家以外の場所と冷静に考えてみるのは如何でしょう。

敷地と庭の話

庭も敷地の一部ですが、「庭と考えるか?」「敷地と考えるか?」で大きく気分が違います。敷地と考えると、如何に「機能」的に使えるか?という気分になりますし、庭と考えると、デザインやレイアウトが気になります。どのような場所が今、あなたの暮らしに必要なのでしょうか?

ここでは、機能性と言う面から具体的に考えてみましょう。

①靴が汚れる現実

さて、大抵の造成された新築の家は、庭と呼ばれる場所に薄く真砂土と呼ばれる花崗岩の風化した土(正確には砂と泥)が撒かれています。この場所を歩くと雨の後では、靴がドロドロになり、新しい玄関ポーチが砂だらけになってしまいます。これは、大変困ったことです。

ここでひとつテーマが出てきます。靴が汚れると不便だということです。

②草が無情に生える現実

新築当初は、綺麗に均された敷地も次第に、草が繁茂しはじめます。よくお客様に質問されます。「なぜ庭には草が生えるの?」。

これも答えは簡単です。庭と呼ばれる場所は人間が勝手に決めただけで、植物にすれば「荒地」に過ぎません。よく生育した森の中に、草は生えていないことを思い起こしてください。草は森を通る道路の脇などにしかありません。つまり、森ではない荒地です。その荒地は、傷を覆うカサブタのように草や蔓、アカメガシワのような樹木が生えています。こうした荒地でしか繁茂できない植物が、庭にやってくるのです。やがて、あなたの庭が森になれば、これら草は衰退していきます。あなたの家の敷地は、巨視的には地球を削った荒地に建っているともいえます。だから、草が地球を癒しにやってくるのです。

しかしながら、我が家が草で覆われることは大変不便で、見た目にもよくありません。

ここでまた、テーマが出てきます。草が生える場所を無くしたい。もしくは、生える面積を少なくしたいということです。

③部屋が機能別で作られる現代

現代の個人住宅の主な役割は、「寝食」となります。つまり「寝る」「食べる」です。そのため、各部屋は、キッチン、リビング、バス、トイレ、寝室と機能別に構成されています。その為、各機能から外れた部分を収納する場所がありません。例えば、キャンプ用品やスキー板などがそうでしょう。これらを室内に持ち込むと、室内の収納が圧迫される傾向があります。

これも、テーマのひとつだと言えます。現在の家作りの宿命として、屋内に余地がなく、屋外に余地を用意すると言うことです。室内の暮らしからはみ出した部分をサポートするために敷地を使うと言うことです。

これら3つのテーマは、どのご家庭にもある特殊なものではありません。その対策はには以下のようなものが考えられます。

靴の汚れ

砂利を敷く、芝生を貼る、園路を作る

草を減らす

 

ウッドデッキなどで庭を狭くする、テラスを作る、砂利を敷く

室外収納

 

室外に物置を設置する

その他に、④洗濯物を干す、布団を干す場所というもの、⑤ゴルフの練習をする場所、⑥子供の遊び場という機能もあります。

また、現代のご家庭では、プライバシーを保護する⑦「遮蔽」という機能も重要です。十分な遮蔽が確保できれば、窓を開け、カーテンを開くことが出来ます。これも大切な機能です。

このように、現在の敷地にどのような機能が必要なのかをまず十分検討することが「最初の一歩」なのではないでしょうか?

 

庭への二歩目

機能面をご考慮いただいた後、もうひとつの現実を考えることも重要です。それは、「家族の変化」という現実です。

郊外の一戸建て。子供は二人。それぞれに子供部屋を与えるために二室を二階に用意する。大抵の家の設計は、家族の「最大数」を前提に作られているといえます。しかし、子供が自立するとこれらの部屋は、使われず放置されていきます。物置となっている場合がよく見受けられます。

これと同じように、庭に作った砂場も、数年で利用価値がなくなります。庭は、一度作ると永遠にその形を止めるようなイメージを持たれますが、家族の変化とともに可変する場所ということを忘れがちです。大きな菜園も加齢とともに草むらへとなっていきます。

では、30歳の時に80歳になった自分を見越して庭を考えるべきなのでしょうか?

それも面白いアイデアかもしれませんが、「今そこにある現実」を無視して、砂場作りもやめ、子供のためのプールも諦めるべきでしょうか?答えはNOでしょう。しかしながら、「家族が変化」していくものであることを忘れずに庭を考える必要があります。

庭は、今の私たち自身の暮らしを支え、楽しませる「仮の場所」であり、年齢とともに演目が変わる舞台のような場所だとも言えます。

砂場を後に菜園や花壇などに使えるようにデザインしておく、また、そのように使える場所を選んでおく 水をやり易い状況を用意しておくという配慮が必要でしょう。部屋の模様替えをするように、庭も模様替えすることが起こるということです。

 

庭への三歩目

機能面をまず、下敷きにして、敷地を割り振ります。頭の片隅に将来の家族も入れておきましょう。これは「今使う庭の耐用年数」とも言えます。

さて、ようやくここで庭の入り口に近づきました。

庭と敷地では、大きく異なる点があります。それは、やはり「美しさ」や「自分らしさ」「気持ちよさ」「快適さ」「楽しさ」などの要素が出てくることです。しかし、それらを求めるあまりにせっかく下敷きに書いた「機能」を忘れないことです。

ここに「機能」と「庭」の齟齬と、矛盾が生まれる場合あります。それは、実際、私たちも同じですのでご安心ください。あなただけに訪れた不運ではありません。

私たち自身も、庭のデザインを考える時、こうした機能性や可変性をまず、基盤に置き考え始めます。そして、矛盾や齟齬を発見し、試行錯誤しながら必要な「カタチ」へと模索します。その作業は、「デザイン」というより、「詰将棋」と呼んだ方が近いと思います。

デザインワークとはカタチを当てはめる行為ではなく、カタチを作っていく行為なのです。カタチをカタチとして当てはめていくことは、レイアウトという全く別種の作業なのです。

庭デザインへの近道

実際、「好きだなぁ」と思う庭の写真をじっくりご覧になってください。その時、その写真に映る世界を分解することが必要です。いくつか簡単な例示します。

庭に植えたい樹木(シンボルツリー)や植物

袖壁とガーデンドアが映っています。

なぜ、袖壁とガーデンドアが必要なのかを考えてください。

答えは簡単です。

この後ろを見せたくないからです。この後ろは、家の脇道なので庭ではありません。その場所と庭を切り離す「機能」が込められています。さらに、ドアと袖壁の関係は、ドアの必要な大きさから決定されています。幅約1M程度の白い袖壁は圧迫感が強いため、ニッチを作り、上端をやや丸めて緩和しているのです。また、左手の植栽枡が一段上がっているのは、修景上高低差を出すためと、芝生をきるための「機能」です。壁の手前の小さな樹木は、これも壁の圧迫感を消すための「機能」です。また、壁を白く塗っているのも手前の植物を美しく見せるための背景としての「機能」なのです。芝生は、完璧ではありませんが、比較的廉価な防草「機能」でもあります。芝生が嫌な方なら、砂利か、園路でもいいでしょう。

庭に植えたい樹木(シンボルツリー)や植物

庭小屋の写真です。

庭小屋は当然、物置になります。また、裏側の電気盤の目隠しとして機能するようにこの場所に配置しています。庭小屋のドア側が家からの風景ですので、家から電気盤は見えないことになります。庭小屋に続く植栽桝と袖壁に立水栓を仕掛けてありますが、これは、この微妙な空間の区切りと立水栓という「機能」を並列に持たせています。

ですから、ここでは収納と遮蔽という「機能」を持たせていると言えます。

 

まとめ

このように、写真を見ていただくと、「なぜ 後ろに塀があるの?」とか「どうして石垣をつんであるの?」という理由が見えてきます。私たちも「機能」という下敷きの上に、デザインしていることがお分かりいただけるのではないかと思います。つまるところ、最後にデザインなのです。

そして、どのような庭が良いのかという問題ではなく、どのような暮らしをしたいのか?その時、どのような機能が必要なのかというが、この余った敷地を考える上で重要なことになってきます。

モノよりもコト。外でしたいこと。外で解決しなければならないこと。

例えば、庭でキャンプするのも子供達には楽しそうなイベントです。庭で採れた果樹やハーブを使って料理を作ることも楽しそうです。果樹は意外と長生きなので、可変しない場所に植えるのがいいでしょう。余地としての敷地は、あなたの暮らしをサポートする実は楽しい空間開発の場所なのです

最後に

デザインと費用の問題は、実に複雑です。これはプロでないと積算し難いとも言えます。そのため、ご家族に必要な「コト」をよく考えられて、それの最大数と最小数。マックスとミニマム。優先順位を決めて、お近くのプロにご相談されることをお勧めします。

意外な解決策を提示していただけるかもしれませんよ。

投稿日:2021/09/18

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